✦詩「聴いてください」

前回のコラムSilent, lonely listening|瀬戸内寂聴へのインタヴュー記事よりをまとめるに際して、’Listen’という詩のことを思い出しました。

この詩を取り上げている方は多いですし、世界中で活用されており、ご存知の方が多いと思うのですが、関心を寄せてくださった方がおられたので、コラムで紹介します。

この詩は、”Loving Each Other”というLeo F. Buscagliaさんがお書きになりミリオンセラーになった本で有名になったようです。

日本語版は、1986年に講談社から林真理子さんと相原真理子さんの共訳で『Loving Each Other』という原書そのままのタイトルで出版されています。
(amazon日本の当該ページを見ると、定価の3倍くらいの値段の中古が売られているので、今でも人気のある本なのですね、きっと)

原書から引用します。

‘Listen’ by a anonymous writer

When I ask you to listen to me and you start giving advice,
you have not done what I asked.

When I ask you to listen to me and you begin to tell me why I shouldn’t feel that way,
you are trampling on my feelings.

When I ask you to listen to me and you feel you have to do something to solve my problems,
you have failed me, strange as that may seem.

Perhaps that’s why prayer works for some people.
Because God is mute and He doesn’t offer advice or try to fix things.
He just listens and trusts you to work it out for yourself.

So please, just listen and hear me.
And if you want to talk, wait a few minutes for your turn and I promise I’ll listen to you.

—Buscaglia, Leo F., “Loving Each Other”, 1984, SLACK Inc., NJ, USA,
Kindle版, 位置No. 631/2021

拙訳です。

「聴いてください」作者匿名

私が聴いてと頼んで、あなたがアドバイスを始めたら 、
あなたは私が頼んだことをしていないのです。

私が聴いてと頼んで、あなたが私はそんなふうに感じるべきでないと理由を話し始めたら 、
あなたは私の気持ちを踏みにじっているのです。

私が聴いてと頼んで、あなたが私の問題を解決するために何かをしなければならないと感じたら、
あなたは私を失望させています。だって、おかしな話ですよね。

祈ることに慰めを見出す人がいるのはそのためでしょう。
なぜなら、神様は無言です、忠告しないし、物事を直そうとはしません。
神様はただ耳を傾け、あなたが自分でなんとかすると信じているのです。

だから、どうか、ただ私に耳を傾け、聴いてください。
そして、もしあなたが話したければ、あなたの番になるまで少し待ってください、そうすればきっと私はあなたに耳を傾けますから。

(訳:堀尾直美)

“Loving Each Other”の著者レオ・ブスカリアさんは、傾聴しようとしたのに失敗する落とし穴が描かれていると紹介しています。
"Loving Each Other"表紙

(文責:堀尾)