トレーナーの堀尾です。インタラクティブ・フォーカシングについて書いてみます。

インタラクティブ・フォーカシングとは?

インタラクティブ・フォーカシングは、簡単に言うと、フォーカサーとリスナーが交替して話もしながら行う相互的なフォーカシング・セッションに、特徴的なやりとりである、二重の共感の時、相互作用的応答、関係の確かめを加えたものです。1980年代の終わりにジャネット・クラインが手順化しました。

当時ジャネットは、人とお互いに心から通じ合える関係が持てる方法を探し求め、インタラクティブ・フォーカシング・プロセスを見つけ出しました。そして手順化することで、フォーカシングと、人と人が深くほんもののつながりを持つことを結びつけようとしたのです。

インタラクティブ・フォーカシングの概要

インタラクティブ・フォーカシングは、基本の型では、話し手と聴き手のペアになります。
下記の枠組みに沿って、話し手も聴き手も、自分の実感(「からだ」の感じ)に触れながら、話しをし、聴きます。

実感に触れながらすることで、単なる感情以上の、もっと複雑な、状況を反映した、微妙な気持ち・感じ・感覚まで含みこむことができます。

インタラクティブ・フォーカシングの枠組みには、出来事や事柄を含めた聴いてほしい、わかってほしい「話」をすることが含まれています。
(フォーカシングの場合は、出来事や事柄を説明せずにできることが利点です)
フォーカシングと違い、聴き手が自分の感じたことを話し手に伝える段階が含まれています。

充分実感に触れながら話しをし、また、聴くことができると、とても満足感のあるセッションがもてます。

-インタラクティブ・フォーカシングの枠組みの概略-

話し手が教える傾聴(伝え返しと修正)

1.話し手は、実感に触れながら話をする。
2.聴き手は、自分の実感に響いた言葉を伝え返す。
3.話し手は、聴き手の言葉を「からだ」に起きていること(実感)とつき合わせて、必要なら修正したり、付け加えたりする(話し手が教える)。
(話が一段落するまで、あるいは、時間の範囲内で、以上を繰り返す)

二重の共感

4.聴き手から話し手への共感的応答+話し手も自分に対して共感的に振り返る。

相互作用的応答

5.今度は先ほどまでの聴き手が話し手となり、さっき聴いた話がどのように自分自身に触れたか、その話をする。先ほどまでの話し手は聴き手となって聴く。このようにして、役割を交代して、1〜3を行う。

相互作用的応答についての二重の共感

6.聴き手から話し手への共感的応答+話し手も自分に対して共感的に振り返る。

関係の確かめ

7.今、自分自身についてどう感じているか,そして、今、相手と自分の関係をどう感じているかを、お互いにわかち合う。

※4まで行うことはシングルウィング,7まではフルセッションと呼ばれています。

4つの礎

インタラクティブ・フォーカシングの枠組みを支える4つの土台です。

  1. 安全・安心な環境:安心かどうかが分かるのは自分、自分の安全は自分で守る、自分を大切に。
  2. からだの感じ:いつもからだの感じに注意を向けながら、実感にとどまりながら
  3. 共感的傾聴:聴き手は、話しの奥、瞳の奥にいるそのひと( そこにひとがいる)に、からだの感じから耳を傾ける。
  4. 話し手が主役:なにがどのように必要か分かっているのは話し手、話し手のからだの感じがそれを教えてくれる。だから、聴き手の聴き方が違っていたら、話し手は聴き手に教える。

インタラクティブ・フォーカシングと傾聴

インタラクティブ・フォーカシングを行うことで、相手の準拠枠(internal frame of reference:内的準拠枠)に沿って聴く、「内側から(理解する)」とはどういうことかを体験できると思います。話し手が感じていることか、話し手の話を聴いて自分が感じていることかを区別する練習にもなりますし、聴き手の思い入れや思い込みに気づく練習にもなります。

話し手になった時には、自己一致して話す練習になります。自分自身に受容的共感的態度を向け、なにが言いたいのか、どんな気持ちなのかを、メタ認知的に捉える訓練にもなります。

インタラクティブ・フォーカシングを学ぶ利点

内容にとらわれずに、その人全体を聴く

インタラクティブ・フォーカシングの枠組みで聴く練習を重ねることは、内容にとらわれずに、その人全体を聴く訓練になります。

セラピーの指導を受けていた先生が「コンテント(内容)にとらわれるな」とよくおっしゃっていたのですが、インタラクティブ・フォーカシングの実践を積む中で、内容にとらわれずに相手から聞こえてくることを聞けるようになったと思います。
(そういう意味では、listen というより hear なのかもしれません)
そして、それをクライアントさんに返すことで、また一歩セラピーが進みます。

実際のセラピーでは、「ここ」というところですかさず介入することも必要なのだけれど、そればかりになると、発話の内容に関心が向き発話者であるクライエントさんから離れてしまいます。
内容1つ1つにどう返そうかと悩みだしたら、もうおしまい。

インタラクティブ・フォーカシングの実践を積むことは、そうはならずに、耳を傾けて聴くけれども、力まず、しっかりそこにいることに、確実に役立ったように思います。

ふたりの間にある事柄を扱える

フォーカシングの自主グループなどで、お互いフォーカサー/リスナーをつとめて、セッションをやった時、なにか不全感のようなものが残る時がありませんか。

振り返りで解消できればいいのですが、デリケートな問題だと話し合うこと自体難しく感じられることが少なくないかもしれません。

こういう時、お互いにインタラクティブ・フォーカシングを知っていると、インタラクティブの枠組みが持つ、公平・安全な環境の中で、この問題(自分が感じた不全感や、もやもや、相手に対して感じたことなど)をあつかうことができます。

元々インタラクティブ・フォーカシングは、ふたりの間にある事柄、わだかまり、問題を安心して公平、対等に話し合え、そして、分かり合える方法として開発されました。

2002年に開発者のジャネット・クラインと協力者のメアリー・マクガイアによるデモんストレーションをはじめて観た時、とても驚きました。
なぜなら、そこで話された問題は、精神分析用語で言えば妄想-分裂ポジションのレベルのふたりの間にある事柄だったからです。

ジャネット・クラインとメアリー・マクガイア YouTubeより

ジャネット・クラインとメアリー・マクガイア
クリックすると2人でインタラクティブ・フォーカシングについて話しているYouTube動画が開きます

セッションに限らず、なにかお互いの間にある問題について話すとしたら、もっとも公平・安全なやり方のように思います。
私は、扱い難い事もインタラクティブ・フォーカシングの枠組みなら話せると感じています。

もし、自主グループなどに参加していらっしゃるとしたら、グループみんながインタラウティブ・フォーカシングを知っていることは、グループの運営にとても役立つものだと思います。

カップルセラピーへの応用

したがって、もちろんカップルセラピーに用いられています。

下方の参考書籍に挙げた『解決指向フォーカシング療法』11章「合同面接:相互的にかかわる技」で著者のバラ・ジェイソンが、カップルとのインタラクティブ・フォーカシング・プロセスの逐語記録を掲載しています。

この本の「推薦」で長谷川啓三先生は、この本ではじめてインタラクティブ・フォーカシングを知った、カップルとのインタラクティブ・フォーカシングに期待させるものを感じると書いておられます。

インタラクティブ・フォーカシングを日常に活かす

ピア・カウンセリングや対人援助者、感情労働者同士が互いにサポートし合う方法として使えます。

情緒的な話題に限らず、インタラクティブ・フォーカシングを用いることで、運営や企画その他一般的な業務について、スムーズに素早く核心に触れる話し合いができます。

練習についての覚え書き

慣れないうちは

3人組以上オブザーバーがいる状況で、まずは「二重の共感」でおしまいにするシングルウィングでの練習を重ねることが安全安心かもしれません。

ただし、よく慣れた方に付いていてもらえるなら、フルセッション(関係の確かめまで)でやるとインタラクティブの醍醐味が3倍味わえると思います。

その場合にも、初心の練習のうちは、ふたり(話し手と聴き手)の間にあることについて話すのはなしにした方が良いかもしれません。
やってもよさそうかどうか、それぞれのフェルトセンスでしっかりと確かめましょう。

話し手と聴き手の間にあることについて話すとき

これは、たとえ聴き手に対しての明らかにポジティヴな話しであっても、シングルウィングでやる時は御法度にした方がいいように思います。

ふたりの間にあることを取り上げるなら、フルセッションであることが不可欠だと思います。

なぜなら、せっかくインタラクティブ・フォーカシングが持っている公平さを、シングルでは保てないからです。

聴き手が確かめたくなったり話したくなっても、シングルウイングでは、その場がありませんから。

ゆっくり行う

セッションを始めるに際には、今、目の前にいる聴き手になにを話したいかを感じる時間を持ちます。

この時ゆっくり時間をかけて、自分(話し手)だけでなく、聴き手や、場、時間などについても、充分感じて、その中から出てきたことを話すようにしましょう。

そうすれば、例えば、シングルウィングである時や時間が少ししかない時に二人の間のことを取り上げることはないと思います。

かえってある程度以上慣れた時に、不用意に始めがちです。
基本をしっかり、押さえるべきところをきちんと押さえて学び、枠組みに沿ってできるようになる必要があります。繰り返し練習することで身につきます。

参考書籍