Slow is fast.

Slow is fast.
スロー・イズ・ファスト

阿部トレーナーによるコラムです。

とてもフォーカシング的なプロセス、やりとり。フォーカシングを学ぶことはこんなふうに日常に活きる、活かせると思います。ぜひおしまいまでどうぞ。

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 初めて、「タイパ」と聞いたとき、なんのことやら、さっぱりわからなかった。
「タイパ」とは、タイムパフォーマンスの略。今どき、タイパがいいように、録画は倍速で見て、つまらなければ途中で止めるという。だから、ドラマの脚本も、黙って演技で見せるよりもセリフが多くなりつつあるのだとか。はぁ。

 そういえば、今どき、見たいもの食べたいもの訪れたいところをきっちり計画して、タイパよくまわる旅行が流行りとの記事も読んだ。それ故に、お天気やアクシデントで予定通りにいかないと、ストレスが溜まり、トラブルになりやすいとかなんとか……ほんとかな?

 もちろん、世の中タイパが全てではないのは自明の理だが、なにやら、世情気忙しく感じるのは、私の性格か、あるいは年を重ねたせいなのか。

 狭い日本、そんなに急いでどこへいく

 1970年代の交通安全スローガンを思いだすくらいには、私は、「今どき」から遠く離れている。

 先日、ある人に相談事を切り出した。結論はAかBか、間をとってCかしかないことは、重々わかっていた。相手も、「あなたがしたいように決めていいんじゃない」との返答。間違いなく、3択だ。

 がしかし。

 相談事を相手にわかってもらえるように、丁寧なやり取りをしているうちに、相談事は相談事ではなくなっていった。

 信頼できる相手に、時間をかけて、伝えたいことにズレがないよう言葉を選んで率直に伝え、かえってきた言葉を味わい、自分になにが起きているのか、自分はどう感じているのか、観察する。そこから産まれた新しいなにかを、言葉にして、また伝える。

 相談事の、もうひとつ、もうふたつ、奥にあるものが立ち上がってくる。

 より深く、より根元へ。

 ああ、私の中に、こんなコンプレックスや不安が、このちくりとした痛みがあるからこそ、この相談が産まれたんだなぁ。

 ただ、痛みに気づく。

 そして、抱えておく。

 結局、相談事の結論は出なかった。そもそも急ぎの相談ではないし、結論よりも、より深い、相談事のコアに近い気づきを得て、私は十分に満足だった。

 痛みは、希望を内包している。

 この痛みをやさしく大切に抱えていれば、気が熟した時に、善き結論は出るだろう。

 小さな人間、そんなに急いでどこに行く

 否、どこに行ける?

 Slow is fast.

 丁寧なやりとりを重ね、より根元に近い場所から出した結論は、きっと加速機械をつけたように、私をより早く、より遠くまで連れて行くだろう。

(文責:あべ)

12月のバラ