✦書籍紹介:石井栄子・小山孝子著『フォーカシング指向親向け講座―親子のためのホット講座』

*以前、日本フォーカシング協会ニュースレター向けに書いた書籍紹介を載せておこうと思います。

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石井栄子・小山孝子著『フォーカシング指向親向け講座―親子のためのホット講座』2014、コスモス・ライブラリー

日本フォーカシング協会メンバーであり、日本こどもとフォーカシング・アソシエイツのメンバーである石井栄子さん、小山孝子さんの本である。
本の著者プロフィールから、お二人を紹介しよう。
石井さんは、特定非営利活動法人乳幼児親子支援研究機構の理事長、人間学の博士号をお持ちで大学の講師も務めておられる。
小山さんは、30年以上幼稚園、保育所にて親子に関わり助教授、講師も務めてこられ、同法人の副理事長である。

お二人はこの乳幼児親子支援研究機構を基盤とし、子育てひろばを複数主催するとともに、乳幼児の保護者や、乳幼児に関わる専門職、関係機関、ボランティアのための研修・相談事業などを行っている。
この本には、その事業のひとつ「フォーカシング指向親向け講座 親子のためのホット講座」についての具体的な紹介、解説が書かれている。

カバー表紙にカラフルな、様々な気持ち、一人一人違う親子、それを取り巻く地域やつながりを思わせる絵のついた、百頁足らずB6サイズほどの小さな本だ。
その小さな本に、お二人の長年のご経験と学びの知恵と思いが詰まっている。

『フォーカシング指向親向け講座』書影

内容をみてみよう。
本書は、4つの章から成っている。
第1章 「講座を受けて、ほっとできる子育てに」では、講座が大切にしていること、特徴が短く説明されている。
第2章は「では、フォーカシング指向親向け講座に参加してみましょう」で、この講座を受けてみたい保護者に向け具体的に講座の内容を紹介している。
第3章「フォーカシング指向親向け講座を開いてみましょう」では、講座を開いてみたい支援者のために具体的な実施方法や留意点、参加者の声などが書かれている。
第4章は「フォーカシングと照らし合わせてみると」で、本に取り上げている用語を解説する形で、講座のベースであるフォーカシングについて説明している。

講座の概要をお伝えしよう。
講座は1ヶ月に1回、1回2時間程度の4回連続講座で、参加者20名程度にファシリテーター2人となっている。
1回の講座は1つから3つのワークやグループでの話し合いで構成される。
フェルトセンス、クリアリング・ア・スペース、フォーカシング的態度、ミラーリング、描画による象徴化、傾聴などフォーカシング的要素を取り入れ、「親の肯定的な思いも否定的な思いも同じように尊重し、親と子どもが本来持っている力をしっかりと信じて、前向きな親子関係を作り、親子の成長をサポートする講座」として考え出された。
参加することで自分で自分の気持ちを受けとめ、お互いの大変さにも気づき分かち合い、自分の気持ちへの対処法と子どもへの対応の仕方を少しずつ学んでいけるよう工夫されている。

本書で紹介されている講座全体に関する参加者の声を少し紹介しよう。
1回目終了後「…みんな…同じように苦労していることがわかった」「暖かなコメントがもらえて、ホッとできた」、2回目終了後「育児においてもありのままの自分を認めてよいことに気づいた」「ミラーリングをすることで、子どもの主張がなんとなくわかった」、3回目終了後「子どもの対応のヒントがもらえた」「子どもの持つ力を感じた」、4回目終了後「ポジティブな気持ちがたくさん湧いてきた」「話を聴いてもらえる心地よさがわかった」。

筆者はといえば、この本を読みながら、自分自身の子育て、関わっていた親グループやそのメンバーの方たちのことが思い浮かんだ。
ペアレントトレーニングなどを学んでもうまくできず、「指導」されてもできず、ますます落ち込み追い詰められる保護者は少なくない。
そのような自分が受けとめられ、同じように悩んでいる人に出会い、気持ちを話すことができ、お互いを支え合えるようなグループの必要性を感じている。
この講座は、共感的受容的であることが子どもにとっても自分自身に対してもやさしくほっとできることを体感を通して学ぶとともに、同じように子育てに悩む他の人々に出会い、つながれる時間的コミュニティであると思った。

本書には、フォーカシング的態度を大切にしながら進めていくヒントがそこここにあり、子育て支援ではない講座を考える上でも参考になるであろう。
第4章のフォーカシング用語の解説は簡潔でわかりやすく、誰かにこれらを説明しようとする時の参考になるのではないだろうか。

筆者は本書に、子育てに悩み苦しんでいる保護者のニーズとよりよい子育てがしたいという願いに応え、「親子が地域で、それぞれ、一人の人間として、しっかりと生きていける力をつけられるよう」支援するために提供できるものがフォーカシングにあったという印象を持った。
とすれば、これはコミュニティ・ウェルネス・フォーカシングの実践とも言えるのではないだろうか。

子育て中の方、子育て支援に関わる方々だけでなく、フォーカシングを伝えたり、社会に活かしたいと考えている方々にぜひお読みいただきたい本である。

(日本フォーカシング協会ニュースレター2015年春号より)

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なお、後日Kindle版が発売されている⇒ https://www.amazon.co.jp/ebook/dp/B01MYENZRL/

また、この書籍の姉妹版も出版されている。
石井栄子・小山孝子『子育ての視点が変わるホットワーク集—子どもと親の支援に関わるすべての人のために』2017、コスモス・ライブラリー

(文責:堀尾直美)