✦ポーズと社会変革—ウィリアム・エルナンデスのフェルトセンス・リテラシー
フォーカシングと社会変革と聞いても、ピンとこないかもしれません。しかし、例えばエクアドルの地で、それは支配関係から抜け出し尊厳を取り戻すため、実用的な手立てとなっています。社会開発の最前線で奮闘してきたウィリアム・エルナンデスの物語。
まず、私たちの世界に「ポーズ(時間的な間)」をもたらすことから始めましょう。
「世界が私たちのために立ち止まってくれることはありません。自らの世界にポーズをもたらすかどうかは、私たち次第なのです」「ポーズ」は、真正な(オーセンティックな)行動への第一歩です。
「力による支配」を克服するための第一歩は、内面においてさえも「ポーズ」をとること。
感じるための時間を取ること。
ポーズをとることは、支配関係という制約から一歩外へ踏み出すことです。——ウィリアム・エルナンデス
William Hernández:
Start with bringing a pause to our world.
“The world will not pause for us. It is up to us to bring a pause to our world.”Pausing is a first step to authentic acting.
The first step to overcome power-over is the pause! Even internally.
Taking a moment to sense.
Pausing is stepping out of the constraints of the power relationship.(リン・プレストン主宰 HELP FOR HELPERS(対人援助職のためのフリー・フォーカシング・サポートグループ)”告知メール: ‘The Unsayables About Politics, Part II with GISELA UHL AND CHARLES F. HERR’より引用)
ウィリアムは、エクアドルのフォーカシング・トレーナーであり、国際フォーカシング研究所のコーディネーターです。
元々社会活動家であった彼は、NGOエクアドル開発財団(FECD)のCEO/エクゼクティブ・ディレクターとして、貧困層への小口融資や農業技術提供など「社会開発のスペシャリスト」として活動していました。しかし、経済的支援だけでは、長年の抑圧による深い無力感を根底から変えることはできないことに気づきました。
その突破口を求めてユージン・ジェンドリンと出会い、晩年の彼と深い対話を重ねる中で、実感に触れる力(フェルトセンス・リテラシー:FSL)こそが人間開発の核であると確信しました。なぜなら、周りから「お前は無能だ」と言われ続けてきた人が、自分の内側にある「微かな違和感」や「小さな希望」に触れることができたとき、それは外からの支配から抜け出し、自分自身の尊厳を取り戻す瞬間になるからです。
彼はFECDをFSL基盤の組織へと変革し、さらに自らエクアドル・フォーカシング・インスティテュート(Instituto de Focusing de Ecuador)を設立。支配的な状況下にある人々に「立ち止まって自らの声を聴く(ポーズをとる)」ことを届ける活動を通じて、社会変革と個人の癒しを統合する取り組みを続けています。

堀尾直美・日笠摩子(2013)「ポージング: William Hernandez “Teaching the pause” より、村山正治監修・日笠摩子ほか編著『フォーカシングはみんなのもの: コミュニティが元気になる31の方法』2013、創元社、pp.20
(文責:堀尾)
